Act.15 Side Yamato

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「まぁどっちを後継にするのかは、お父さんの自由だから思う存分迷ってなさいよ。それより横浜行きの荷物の受付は……?」 後継者をどちらにするかまだ結論が出ないおやっさんに呆れながら真尋が彼女に問いかけると、どこか怯えたような表情の彼女が俺たちに受付用紙を差し出した。 「あの、じゃあここにトラックの車番とドライバーさんのお名前と……それと、ここに携帯電話の番号を記入しておいてください」 携帯番号まで書くなんてやはり大手物流倉庫は違うんだなと思いながらも、心のどこかで不安を感じた。 彼女と俺の接点になり得るものは何一つ残したくないのに。 しかしそれをわざわざ断ったりしたら余計に不審に思われてしまう。 相変わらず俺を真っ直ぐに見つめて来る彼女の視線を全身で感じ、今にも震えてしまいそうな手で自分の名と電話番号を書いた。 ここに書く苗字が橘ではなく、不動であることだけが唯一の救いだったと思いながら。
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