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このまま……俺が橘大和であることを押し隠し、親切なドライバーの不動大和で居続けたら。
一瞬そんなことを考えた自分に失笑する。
しかし、ふと視線を向けるとテーブルの方から俺と阿部遥香を観察する誠也の瞳と交差した。
分かってる。身の程知らずだとでも言いたいんだろう。
だけど俺はもう彼女からも誠也からも目を背けたりしない。
「阿部……遥香だっけ」
「はい」
「アンタちょっと変わってるな」
「え?」
「だけどひとつだけ阿部遥香に言ってやりたい言葉がある」
「……はい?」
何のことなのか分からないと言った表情で首を傾げた彼女を、俺は真っ直ぐに見つめてこの願いを言葉に並べた。
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