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そう思いながら失笑した瞬間だった。
「遥香、宇梶さんと陽向君のトラック見に行こうか」
背後から聞こえた誠也の声に、彼女は全身を小刻みに揺らした。
「あ……私は……」
断ろうとした彼女に有無を言わせないように誠也は言葉を遮り俺に言った。
「不動さん、真尋さんが呼んでますよ」
きっとそれは嘘だと思った。
真尋だったらいちいち誠也に頼んで俺を呼んだりしない。
けれどもう俺は彼女に、今、伝えるべき言葉は伝えたから。
あとは彼女が自分でそこから這い上がろうとするかどうか、だ。
『決めるのはアンタだ』
瞳でそう彼女に訴えた俺は、無言で誠也と彼女の元から離れるしかなかった。
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