332人が本棚に入れています
本棚に追加
「さーて、じゃ真尋婆さんが怒り出す前に片付けちゃいますか」
「誰が婆さんだって?」
「おー怖っ!」
いつもと同じように真尋と言い合う章吾の横顔を見つめながら、俺は今言われた言葉を必死に噛み砕く。
章吾が誠也の母親を殺したと発言する根拠はいったい何なのだろう。
あの事故は、交通整理をしてくれていた章吾の阻止を振り切って反対車線に飛び出した、北関東ロジスティックスのドライバーに責任があるのは明確だったのに。
けれど俺も阿部遥香の父親の救出に必死で、反対車線の事故の件はほとんど記憶がないのも事実。
火傷を負った俺が、阿部遥香の父親と共に救急搬送された病院で誠也と遭遇して、初めて対向車線の事故の被害者が誠也の母親だと知ったほどだった。
最初のコメントを投稿しよう!