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「こ……こんばんは」
「……どうも」
誠也から聞きました。
そう言われるのを覚悟して彼女を見下ろす。
しかし、彼女はそんなことを言う気配もなく、にこやかに笑って言った。
「あ、私もお弁当を買いに来て……」
「……そう」
「はい。あ、大和さんもお弁当買ったんですね」
何でだ? 誠也から聞いてないのか?
疑問を抱きながら頷いた俺をやはり潤んだ瞳で見つめた彼女は、恥ずかしそうに「じゃあ失礼します」と頭を下げ店の中に入って行った。
それを呆然と見送った俺は、予想外の展開に戸惑いながらポケットから煙草を取り出した。
片手で1本持ち上げて咥え、入れ替わりに取り出したライターで火をつける。
ゆるゆると揺らぎながら立ちのぼった煙をぼんやりと眺めため息を吐き出した。
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