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あんな風に俺に牽制しまくったくせに、どうして誠也は彼女に真実を告げないのだろう。
今日の誠也を見ていれば、誰だって分かるほどアイツは阿部遥香を自分の女扱いしていた。
あげく、交差点での抱擁まで俺に見せつけたのは明らかに誠也の挑発だったと思う。
それなのに……何故?
火をつけたまま、吸うのも忘れていた煙草から灰がポトリと地面に落ちた時、買い物を終えた彼女が店から出て来た。
まるで彼女が買い物を終えるのをここで待っていたかのような俺の行動に、潤んだ瞳が無言で問いかける。
確かめたい。
それを知っても君は……俺に笑いかけてくれるのか。
抑えきれない衝動で、俺は彼女に言葉をかけた。
「メシ……買って来た?」
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