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これはつまり、誠也は俺が橘大和であることを自分の口から言わざるを得ないように仕向けているのではないだろうか。
俺が彼女に抱く感情が事故の責任から感じる罪悪感なのか。
それとも……邪な感情なのか。
そんなことを考えながら見下ろしていると、彼女はトラックに乗り込む手前でおずおずと困惑の表情を俺に向けた。
その様子を見て、ふと気づく。
大型トラックの運転席は2段のステップを登らなければたどり着けない。
乗りなれた俺達にしてみたら大して高さを感じないけれど、女性からしたら梯子を登るような感覚なのだろう。
右手だけは掴まりながら登れるように手を掛けるフックを、さり気なく指差しながら俺は彼女の手から弁当の袋を取り上げた。
「登れる?」
俺の問いかけに彼女は、やはり困ったように頷きながら答える。
「はい……。だけど背中を向けていて貰えますか?」
「え?」
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