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「わかってる。佐俣さんとは身体の関係もなかったんだってな。
それなのに自分を犠牲にしてまで誠也を守りたいと思うほど惚れさせたんだから、本当にお前は凄い男だよ」
「…………」
学生の頃の誠也の追っかけをしていた女たちだって、誠也にはその気なんて全くないのに何故か誠也を崇拝していた気がする。
それはたぶん誠也が持つ才能なのかもしれないと思いながら小さく笑った。
けれどこれだけは伝えなければと俺は淡々と言葉を紡ぐ。
「俺が願うのは阿部さんの幸せだけなんだ。
彼女の父親が最後に言った言葉の通り……彼女が幸せになれるように守りたかっただけ。
だけど、彼女を幸せにできるのは……」
「…………」
あの雨の日から始まったこの導きの結末は、きっとこれが正しい答えであって欲しい。
そんな想いを胸に俺は言った。
「誠也、お前だと俺は思ってる」
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