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俺が乗り越えられなかった加害者と被害者の壁。
そんなしがらみに囚われる必要のない誠也ならきっと……。
「……不動さん」
「言いたかったのはそれだけ。
来週からは章吾が横浜定期を走ることになると思う」
淡々と言葉を続ける俺に誠也が問いかける。
「……逃げるんですか?」
それは違う。
「逃げるつもりはねぇよ。
またいつか必ず俺はここに帰って来る。
その時、誠也が彼女を幸せにしてなかったら……」
「してなかったら?」
決まってんだろ。
そう思いながら俺は小さく笑って言った。
「今度こそ本気で奪いに行くからな」
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