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しかし真尋の家に向かう車の後部座席、ふいに彼女の視線が俺に向けられて小さな声で問いかける。
「もしかして……私のことで佐俣さんに何か嫌なことを言われたんですか?」
あまりに唐突に聞かれたことでさすがに動揺が隠せなかった。
嫌なこと……確かにそうかもしれない。
誠也がそこまで彼女を愛しているなんて思いもしなかったし、今日まで俺がして来たことは、二人の揃わなかった想いの丈をさらに逸脱させてしまうような行為だったからだ。
押し黙ったまま前を見つめる俺の隣で彼女は申し訳なさそうに俯いて呟く。
「ごめんなさい」
この耳に聞こえた言葉が今の俺にはたまらなく痛かった。
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