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「……あの……」
背中に聞こえた彼女の声が微かに震えていて、せき止めていた思いが一気にこみ上げる。
頭で思うとのは裏腹に俺の足は自然と立ちつくす彼女に歩み寄ってしまった。
……何をしているんだ、俺は。
しかし佐俣彩愛の件も俺自身の邪な想いも。
そして愛する女の幸せを願うからこそ……離れる選択をした誠也の想いも。
伝えなければならない時は来ている気がして。
「あのさ、俺が運転するから、場所を変えて少し話さないか?」
「えっ?」
唐突な申し出に彼女は一瞬唖然として俺を見上げた。
もう二人きりで会話を出来るのも、もしかしたらこれが最後かもしれない。
そんな予感に包まれながら俺は言い訳を並べる。
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