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「ここでもいいけど、巡回が来たら車庫荒らしと勘違いされそうだし」
「あっ、はいっ!」
相変わらず驚くと、普段とは違うトーンで返事をしてしまう彼女に思わず笑いそうになってしまった。
そんな自分の行動に彼女自身も慌てて両手で口を塞いで申し訳なさそうに俺を見上げる。
彼女のこうした素朴さが俺の心を捕えて離さないのに。
彼女に憎まれることでしか俺の存在価値がないことが無性に虚しい。
「じゃあ……阿部さんの車のキー貸して」
「はっ、はい。あの、ごめんなさい」
慌てふためきながらバッグから鍵を取り出した彼女は、俺の差し出した手に鍵を乗せる。
しかしこの行為は、たとえ一時だけでも彼女が自分の命を俺の運転に預けてくれたということ。
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