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「糸井さん俺は……」
「もう糸井さんとか呼ばないでください。
あの頃みたいに誠也って呼び捨てにしたらどうですか?」
剥ぎ落とされて行く誠也の仮面。
けれどそれは俺が剥がしたのではなく、誠也が自ら剥がして行く様にもう何も言えなくなった。
それを誠也が望むようになったのはきっと……。
真尋が言うように誠也自身があの事故からだけではなく、阿部遥香からも歩み出そうとしてくれているからだと俺には受け止められた。
「あの日、反対車線で起きた事故にまで罪悪感を覚えたから俺を誠也って呼べなくなったんでしょ?」
そう言って笑った誠也を見つめる阿部遥香の瞳が大きく揺れる。
それを見つめながら思った。
もう……隠すものなど何もない、と。
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