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「実は章吾が復帰したら、この横浜定期の仕事を引き継いでもらおうと考えていた」
「えっ?」
大和さんの決断を聞かされた瞬間、さすがに動揺する。
けれど彼は淡々とその理由を口にした。
「母親がまた入院したんだ。たぶん……もう長くないと思う」
「…………」
「俺の母親はさ……磐梯山の麓の小さな農村の生まれで、親父と離婚して生まれ育った村に戻ったんだ。
だから今回入院したのも会津若松の病院」
「そうなんですか……」
「うん。お袋の最期くらいは看取ってやらないとって思ってるから。会津に行くことになる」
まるで他人事のように言いながらも、彼の横顔は寂しそうに流れゆく光を追いかけている。
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