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強く引き寄せられた私の身体は、一瞬で彼の香りに包みこまれる。
息が苦しくなるほどにきつく抱きしめられたことで、一気に加速した私の心音と彼の心音が交じり合った。
自然と動き出す私の手は、まるで魂を求めるかのように彼の背中を這って行く。
「……阿部さん……」
頭の上から落ちて来た彼の声にゆっくりと瞳を持ち上げると、私の視界には彼の切ない瞳だけが映り込んだ。
「……はい……」
見つめ合う私と彼を優しく見守る月明かり。
それは時に父の眼差しのようであり、私と大和さんの笑顔を願う誠也のようで。
だけど……。
間近で細められた彼の瞳は、真っ直ぐに私を見つめて呟いた。
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