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「じゃあ章吾、俺も横浜向かわないとだし、阿部さんも明日仕事だからそろそろ帰るけど」
腕時計を見ながら大和さんが言うと宇梶さんは笑いながら追い払う。
「ああ、もう俺は大丈夫だから。真尋もいてくれるし心配いらないぞ」
「別に心配なんかしてねぇよ」
「ですよねぇ」
そう言いながらも宇梶さんは包帯だらけの腕を持ち上げて大和さんに拳を向けた。
お互いが小さく笑いながらその拳をコツンとぶつけると大和さんは私を見て言った。
「阿部さん、帰ろう」
向けられた大和さんの笑顔にほんの少しだけ心を痛ませながら私は頷く。
「はい。 ……あのじゃあ宇梶さん、お大事に」
宇梶さん向かって頭を下げると、すかさず明るい声が返って来た。
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