Act.27

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しかし次の瞬間、佐俣専務は穏やかな表情で大和さんに言った。 「一日も早くお母さんの傍に行ってあげなさい」 「しかし専務っ……」 言いかけた大和さんを佐俣専務は片手で制す。 「俺はね、仕事を優先して母親の最後を看取ってやることが出来なかったんだよ。 それはいまだに俺の中で悔しくてね。 あの時、どうして仕事を放りだしてでも母親の傍に行ってやらなかったんだろうって、何度も後悔したものだ」 「……専務……」 「横浜便は宇梶君が復帰するまでは庸車で間に合わせるし、他の運送会社に任せることもしない。だから不動君は何も心配しなくていい。 親を思う子供の気持ちも分からない本社の意見なんてクソ食らえだ」 そう言って佐俣専務は満足げに笑った。
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