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「じゃあ不動君、今日の横浜便が最終でよろしく頼むね」
「はい。専務、よろしくお願い致します」
もう一度専務に頭を下げる大和さんを横目に、私は感慨深い思いで大和さんの横浜行の出荷指示書を打ち出した。
激しい雨の夜から始まったこの巡り逢い。
初めて彼がこの倉庫に現れた時、キーボードを打つ指先が震えるほど緊張した。
無口で……無骨で。
微塵たりとも揺れることのなかった彼の瞳。
けれど今、カウンターの向こうの彼は穏やかな笑みを浮かべながら私を見つめている。
「お気をつけて」
「ありがとう」
交わす言葉はいつもと同じなのに。
もう私たちの間に加害者と被害者家族という境界線はない。
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