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「ありがとう。退院したらまた皆で流しそうめんしようね」
「はい! それと真尋さん……ご婚約おめでとうございます」
私の言葉に真尋さんは、初めて顔を赤くする。
そしてその照れ隠しなのか、肘で私を小突くと小声で言った。
「次は遥香ちゃんが頑張る番だからね」
真尋さんのエールには、私は曖昧に笑って誤魔化した。
私と大和さんにはまだ乗り越えなければならない大きな壁があるからだ。
「じゃ、阿部さん行こう」
「はい」
大和さんに促され、病室を後にした私たちは夜間出入り口から病院を出る。
深夜の病院の駐車場は凛とした静けさに包まれ、まるでこの世には私と彼しかいないかのようにさえ思えて来るほどだった。
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