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けれど彼はそんな私の気持ちを分かっていたのだろうか。
「いや、俺も積み込みしてそのままここに来たから。
一度家に寄って風呂入るつもりだったしどのみち群馬経由で行くから」
「…………」
それでも申し訳なくて、瞼を伏せて項垂れた時だった。
「くだらないこと気にすんな」
優しく私の頭に手を置いて大和さんは微笑む。
その笑顔がこの胸に痛みを覚えるほどに愛しくて……たまらなく切なさが込み上げた。
キーを回してトラックのエンジンを掛けた彼が、駐車場から走り出し高速道路のインターへと向かって行く。
しかし生まれて初めて乗った走るトラックの車窓から見える景色にその切なさはすぐにかき消された。
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