Act.29

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途中24時間営業のスーパーで軽食を購入して、そこから10分ほど走ると2階建てのコーポの駐車場に彼は車を止めた。 「ここの1階の右角が俺の部屋。お袋が入院している病院はすぐそこなんだ」 車を降りて振り返ると、コーポの300mほど先には病院名が記された看板が暗闇に浮かんでいた。 この立地条件のコーポを選んだことだけで、彼がどれだけお母さんを大切に思っているのか痛感する。 「お袋の実家にって言われたんだけど……病院からも遠いし、叔父たちに極力迷惑は掛けたくないから」 そう言いながら彼は私の荷物を車から降ろし玄関へと進んで行く。 その背中を追いかけながら思う。 やはりこの人は、とても誠実で心の優しい人なのだ。
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