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背後に感じた足音。
だけどその音に振り向かずとも私には分かる。
この足音がいったい誰のものなのか。
近づく気配で心と体が無条件に歓喜する。
そしてその気配は真後ろで止まると、戸惑うことなく私を優しく包み込んだ。
「……唐突過ぎるだろ……」
「……っ……」
「だけど……来てくれて嬉しい」
後頭部から落ちて来た彼の少し照れくさそうな声に私は黙ったまま頷くことしか出来ない。
在来線の電光掲示板から最終電車の発車時刻が消えた瞬間。
私を包んでいた腕が肩に移動して振り向かされた。
同時に私の瞳に映り込んだのは、穏やかな微笑みを浮かべた彼の姿。
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