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「……あ……」
彼の行動の意味を理解していても、戸惑いが隠せない。
しかし彼はやんわりと微笑んで私の手を握ると再び歩き出した。
人の姿もまばらになった駅の構内。
しっかりと握られた手は、やっぱりとても冷たくて。
彼はいったいここで何時間、私を待っていてくれたのだろう。
お母さんの傍にいなくてはいけなかったはずなのに。
申し訳ない思いがこみ上げ俯いた私に気づいたのか、彼は穏やかな表情で言葉を紡ぐ。
「今日はお袋の様子も安定してるんだ。
それに……親父が来てお袋を見てくれてる」
「えっ?」
てっきり私は大和さんひとりでお母さんの看病をしているとばかり思っていたから驚きを隠せなかった。
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