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たとえ私と彼の間にあった加害者と被害者家族の境界線がなくなっても、夫である父を亡くした母となればまた状況は変わる。
彼が不安に思うのも仕方のないことだ。
だけど私は今日、母がくれたメールを開いて彼に見せた。
暗闇の中に浮かんだ液晶文字を静かに目で追った彼は、感慨深い表情で瞼を伏せる。
そして無言のまま繋がった手に再び力を込めた。
やがてたどり着いた駐車場で彼は助手席のドアを開けて私をエスコートしてくれる。
初めて乗る彼の車は、車種は分からないけれど大きなRV車。
いつもトラックに乗っている彼しか知らなかったからとても新鮮で。
けれどそれだけ彼の知らない部分がたくさんあるということだ。
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