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言葉に詰まっていると、やんわりと微笑んだ彼女は自分のカレー皿から一口分をすくって俺に向かって差し出した。
「お母さんの作ってくれたカレーには敵わないけど、私も大和さんの心にしっかりと残る味のカレーを作れるようにこれから頑張りますね」
「…………」
「はい、あーん」
「…………」
満面の笑みを浮かべてカレーを俺に差し出す彼女を見つめながら思った。
きっとこのひとさじのカレーが、俺の人生に於いて一番美味いカレーになるんだろう。
無言のまま口を開けると、彼女はさらに嬉しそうな笑顔を浮かべて俺に給仕してくれた。
そして少しだけ首を傾げ俺に問いかける。
「美味しいですか?」
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