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その様子に笑いを堪えながら俺は自分の皿からカレーをすくって、彼女の口元にスプーンを持って行った。
「はい、あーん」
「……う……」
俺の行動に彼女は短く声を上げ固まっている。
「ほら、早く食べないと冷めるよ」
「……はい……」
おずおずと口を開けた彼女に俺は満面の笑みで給仕のお返し。
すると彼女は口の中に広がった旨味に驚きをあらわにした。
「美味しい……」
そう呟いた彼女は瞼を伏せると、しばし沈黙を保っている。
きっと彼女は今、このカレーがどうしてこんなに美味いのか、その理由を考えているのだろう。
それを静かに見守りながら俺は彼女が瞼を開く時を待つ。
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