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いくら終わった関係とは言え、遥香の目の前で誠也の名を口にすることに戸惑いを感じてしまったからだ。
けれど戸惑う俺の表情で彼女は悟ってしまったのだろうか。
俺の正面でニッコリと笑って見せて小声で言った。
「糸井さんはちゃんと佐俣さんのことを真剣に考えてるから大丈夫だよ」
彼女に言われてやっと気づく。
普段トラックの中で走りながら通話している俺の携帯。
エンジン音の大きなトラックの中ではボリュームを最大にしていないと着信音すら聞きにくかったりする。
当然通話音量も普通より大き目に設定してあったから、真尋の声は静かな部屋の中では筒抜けだったということだ。
若干気まずさを感じたのは、俺が変に誠也のことで気を回し過ぎていたことにも気づいたからで。
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