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冷静になって考えれば、俺と遥香がこうして一緒にいられるのは誠也の深い思いがあってこそだった。
誠也が願ったのは過去から歩み出せなかった俺達が明日を見つめて生きることだ。
自分の思いに嘘をついて現実から目を背けても、そこからは決して歩み出せない。
そんな誠也の思いを誰よりも理解した彼女だからこそ。
今、こうして俺の隣で笑ってくれている。
俺と真正面で向き合って生きることが……自分を深く愛してくれた誠也への感謝にもつながっているのだろう。
そう考えたら、小さなことを気にする自分がやはり情けなく思った。
もはや俺達の間に遠慮なんてものは必要ないと彼女が言ってくれたようで。
俺は意を決してその名を口にした。
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