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弱々しく呟く真尋の声を聞きながら俺は章吾の言葉を頭に思い浮かべていた。
あれは自分たちでトラックを買って独立したばかりの頃だったろうか。
確か真尋の25歳の誕生日の夜のことだったと思う。
朝まで飲み明かした後、三人でゴロ寝して。
眠りについた真尋を真ん中に挟んだ状態で天井を見上げながら章吾が言ったんだ。
『なぁ大和、もしもお前が真尋をひとりの女として見てるなら悪いけど俺、お前にも譲れないから』って。
いつだって俺を立てて自分は2番目でいいよと譲ってくれていた章吾が初めて俺に譲れなかったのが真尋だった。
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