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何も言い返す言葉を無くした真尋は電話口で大きくため息をつく。
「章吾にとっては真尋が全てなんだ。
真尋の前でアイツはそういうことは絶対に口にしないけどな」
「…………」
「自分の目で確かめに行って来い。章吾は間違いなく真尋のトラックの下にもぐってメンテナンスやってるから」
「……うん」
「酒飲んでるんだろうから車で行くなよ」
「分かってるってば」
最後だけはいつもの真尋の口調に戻って電話を切った。
それを俺の隣で黙って聞いていた遥香は小さく笑って呟く。
「宇梶さんって本当に真尋さんが大好きなんですね」
「だろ?」
けれど彼女はその瞳を俺に向けると少しだけ悲しそうな目をした。
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