黒縁眼鏡と調香師

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「だ、大体、会ったのも話したのも渋谷が課を移動して来た昨日が初めてで。あり得ません。」 人は弁解しなければと思うとこんなに頑張れるのかと言う位スムーズに言葉が出て来る。 おかげで橘さんは「そっか」と納得してくれたみたいで、テーブルの肘を降ろして、コーヒーを飲み始めた。 「じゃあ、連絡先の交換しても良い?仕事じゃなくて、プライベートの方。 仕事を抜きにして飯でも食いに行かない?」 動揺している私とは真逆で橘さんは全くいつも通りの落ち着いた雰囲気。同じ歳だと前に聞いた事があるけれど、自分よりもだいぶ大人に感じる。 「クライアントとそう言うのはマズい?だったら、ワークショップ終わるまで待つけど。出来ればすぐ行きたいかも。俺はね。」 大人で…少し強引な所のある、男の人。 「木元さんと話してると楽しいんだよね。だから、こう…気楽に構えて貰って、“友達と飯”みたいな感じでね?って俺今、凄い必死だけど大丈夫?」 そしてユーモアがあって相手に気遣いの出来る人。 …大丈夫、かな。 今までも仕事を終えた後だけど、交換した事もあるし。 それによって会社に迷惑をかける訳じゃないし…私だって橘さんと話すのは楽しいから。
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