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「田所さん、恭介がお気に入りみたいだね。」
いつの間にか隣に来ていた橘さんが私のグラスにカチンと自分のをつけた。
「そうみたいですね。」
「気に食わないとか?」
「もう…橘さん、人が悪いです。」
橘さんのイタズラな表情に少しだけドキッとした心うち。それを隠すように冗談めいて笑う。
「…後輩はみんな可愛いですよ。」
「なら良かった。今日はまだ時間も早いし、木元さんと少しこの後二人で飲めるかな、なんて思ってるんだけど。」
「どう?」と少し覗き込む橘さんはやっぱり少しイタズラっ子みたいな表情で笑ってる。
どう…しよう。
『真理さん、今日絶対一緒に帰ろうね』
変わらず談笑を続けてる渋谷と田所さんに目を向けた。
…この雰囲気だと渋谷は田所さんを送って行く事になりそうだしな。
仕事…だよね、これも。
「…橘さんに誘って頂けるなんて、光栄です。お供させてください」
「マジで?!」
私の返事に、大きな目が更に見開いて瞳がビー玉の様にキラリと綺麗に輝きを放った。
「あーやべっ。かなり嬉しいかも。」
そんなに喜んで頂けるなら…お受けして良かったかな、やっぱり。
橘さんは「じゃあ」とスマホを取り出して、どこかへ連絡してる。
「期待してて?かなりイイ所にご案内します、姫。」
唇の片端をクッとあげた彼に、思わず吹き出した。
「いや、笑う所じゃないんだけど。寧ろ、『キャーかっこいい!』ってときめいてほしいんだけど。」
「だって!橘さん、かっこいいのにかっこつけるから!」
「え?何それ、どういうこと?つまりは…かっこいいの?かっこ悪ぃのどっち?」
「すみません。」と笑いながら少し頭を下げた私に少し苦笑い。
「うん、まあ…笑ってくれんなら何でもいいんだけどね、俺は。」
やっぱり、橘さんと話す空間は心地いい…な。
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