黒縁眼鏡とキラキラ女子

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「すみません。課長が変な事を…」 「いえ。俺こそ、田所さんのお相手として課長に選ばれて光栄です。」 にこやかに笑ってみせると、田所さんは少し俯き気味に頬を赤くする。 …まあ、好かれてんのかなってなんとなくはね。 会食中もあれだけべったりされてたし、その前から社用のメールもなんだかんだ用事をつけて頂いてたし。 「渋谷、お前やっぱりすげーな。田所さんに気に入られるとか…」 本気で感心している高橋に苦笑い。 別に凄くも何ともないでしょ、こんなの。 俺から見りゃ、あれだけ真理さんに買われてるお前のが凄いって思うわ。 「…譲るよ、高橋。」 「いいや、俺には高嶺の花だ!俺はお前を応援する!」 周りがこうやって色々言うのはスルーすればいい話で大して気にならない。 『渋谷、よろしくね!』 だけど、真理さんに言われんのはムカつく。 俺、言ったよね?真理さん以外、興味ないって。 普通、少しは心配になんじゃないの? 自分の事をつい数時間前口説いてたヤツが他の女の子送ってくとか。 『くれぐれも、失礼の無い様に。』 はいはい、『仕事』だもんね。 そりゃ俺はいくらでも、真理さんの言う事なら聞きますよ? タクシー捕まえて、「送ります」と田所さんに声をかけて、嬉しそうに頬を染める彼女と一緒に乗り込んだ。 真理さんは智ちゃんと二人で飲みに…か。 漠然と嫌な予感が脳裏を掠めた。 場所聞き出して迎えに行った方がいいかな。でもそれだって「仕事だ」つってんだし。これで行ったら、真理さんにまた脛を蹴られそう。 背もたれに深く寄りかかって、大きくため息をついたら、いつの間にかタクシーがアパートの前に停まった。 「すみません、送って頂いて。…もし宜しければ、コーヒーでも飲んで休んで行きませんか?」 まあ…悪くないけどね、積極的な女子。 「田所さんにそう言ってもらえて嬉しいんだけど、今日は帰ります」 「そう…ですか」 「うん。俺、送りオオカミはしない主義でして。」 笑った俺に、少し目を見開いてから、恥ずかしそうに俯く姿も完璧。 モテんだろうね、この人。 これだけ綺麗で可愛くて、タイミング良くこうやって隙を作る。そりゃ男がほっとかないでしょ。 俺だってなびいてたって思う、真理さんて存在が無ければ。
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