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「いくら何でも、お前はしゃべり過ぎだって。それだけネタバラしされたら、俺、かっこ悪いじゃん。」
橘さんが苦笑い。
「その…さ。木元さん、本当にいつも頑張ってくれてるから、労いの意味でね?頼んでたんだよ。」
…もしかして、さっき電話を入れてくれていたのって、このカクテルを準備してもらう為?
頬が勝手に緩み出す。
「寧ろ、バーテンさんのネタバラしが嬉しいです。」
「本当に?木元さんて読めないなー。女子って普通スマートが好きなんじゃないの?」
やっぱり橘さんと話す空間は好き。
だけどそれはきっと、橘さんが私をこうやって気にかけてくれているからなのかもしれない。別にその為に一生懸命にやっているわけではないけれど、仕事ぶりを見ていて評価して貰えるのはやっぱり嬉しい。
とりあえず乾杯しようか、とグラスを持ち上げる橘さんに感謝を込めて、「ありがとうございます」と告げてから、私も虹色のカクテルを手に取った。
◇
橘さんと初めて二人で過ごした時間は話題豊富な橘さんの話に没頭していたら、あっという間に過ぎて、いつの間にか終電を気にする時間になっていた。
…本当に、楽しかったな。
通勤途中の電車の中、スマホを鞄から取り出して橘さんとのメッセージ画面を開いた。
『また良かったら飲みに行きましょう』
『また』か…。
一つ息を吐いて、今度は渋谷の連絡先を開く。
だけどそこは、うんともすんとも言わないまま、私が昨日最後に送った『くれぐれも失礼の無い様に』と言うメッセージで止まっていた。
無事送り届けた、位のメッセージくれても良いのに。どうなったか心配するでしょ、こっちだって。
そんな風に思った自分にまた一つ息を吐く。
『送り届けろ』と言ったのは私なんだし渋谷はそれに従っただけで。例えそこで何があったとしても、私に何かを言う権利は無い。というか、そんな風に勘ぐるなんて私、どれだけ器が小さいんだか。
スマホを仕舞うとよろけそうになるピンヒールに意識を向けてホームに降りた。
…ワークショップまで後半月。
発注はほぼ済んでる。
後は、会場準備の段取りを念入りに計画するだけ。
気合いを入れて働かなきゃ。
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