黒縁眼鏡と疑心暗鬼

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◇◇ 真理さんと智ちゃんの事を考えながら迎えた翌日、クライアントとの打ち合わせを終えて、スマホで見た差出人不明のメール。 『木元真理子は枕営業をしています。』 …何これ。 発信元…だけじゃなくて、転送したヤツもわからない。 だけどこれ、確実に智ちゃんと真理さんが仲良しだって知っている人物だよな。と言う事は、昨日の飲み会の席に居たヤツか…もしくは、課内の誰か。 昨日過った不安が的中して後悔に駆られた。 やっぱり、臑を蹴られても迎えに行くべきだった。 ダッシュで会社に行って三課に顔を出したけど真理さんの姿は無くて、さりげなく所在を確認したら『真田課長と出て行った』。 待てよ…ヤバくない?それ。 昨日、真理さんがおかしくなったのは俺が給湯室を出て真田さんと二人になった後からだよな。 更に嫌な予感が胸中を駆け巡る。 …とにかく早く見つけないと。 完全に動揺している頭に落ち着けと訴えながら懸命に考えて辿り着いた、小会議室。 どう考えても迫られている真理さんを見て一気に血の気が逆流し、鳥肌すら立った。 ”お前は俺の側で仕事してりゃいいんだよ” 振り上げそうになった拳をグッと抑えて、真田さんの手首を力一杯握る。 …どんだけ真理さんが頑張って仕事をしてると思ってんだよ。あんた、最良のポジションに居たくせに、真理さんの何を見てたんだよ。 この会社に入って初めて人を睨みつけたって思う。真田さんはたじろいで、不服そうにはしていたけど、退散して行った。 けど、真理さんは俺の事なんて対して見ずに小刻みに震えてて『大丈夫?』と手を伸ばしたらそれを払いのけた。 そればかりか、智ちゃんに連絡するって言い出す。 待ってよ、俺が居るでしょ?ここに。 明らかに智ちゃんに救いを求めようとしている真理さんを咄嗟に捕らえたけど、どう考えても疑心暗鬼になっている真理さんに俺の本音は届かない。 「あ~…もう。」 小会議室を出て行くその背中を見守って、思わず声を上げてその場にしゃがみ込んだ。 やっぱり昨日、無理矢理にでもお持ち帰りすりゃよかったわ、こんな事なら。 覚えてろよ、メールしたヤツ。 お前のせいで、いい方向に傾いてたのがポシャったんだから。 言っとくけど、俺、こういうの結構、根に持つよ?
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