黒縁眼鏡とフラットシューズ

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◇◇ まだ見ぬ敵に矛先を向けながら3課に戻る途中の廊下で懐かしい顔を見かけた。 「恭介!」 「おー、樹。暫く見ない間に益々イケメンになった?」 言った俺に苦笑いの、顔が濃いめのガタイの良いイケメン、鎌田樹。そのガタイの良さとは裏腹にストイックなまでに細かい配慮を施しイベントを必ず成功へ導くと噂される一課のエース。同期入社だし意気投合して、一課にいる時には結構一緒に仕事をしていた。 「お前、三課に行ってから連絡さっぱりじゃねーかよ。忙しい?」 「まあねそっちは?」 「相変わらず。今度、幕張メッセで開かれるイベントの開催者が結構細かくてさ…。」 「そりゃ、樹しか担当出来ないね。」 「そ、俺と意気投合。」 二カッと大きく白い歯を見せて笑う彼はなんつーか、野獣みたい。 「ねえ、補佐に付いてんの誰?」 「金木。」 やっぱりそこは普遍か…。 後から沢山の資料を抱えてひょこひょこ現れた、女の子。 「鎌田さん…出掛ける前に、資料を返しに行ってきます。」 「ああ…俺も行く。」 「だ、大丈夫ですから!一人で行けます!」 「や、一緒に行くつってんだろうが。」 …相変わらずのご関係で。 「ねっきー、大丈夫?」 「し、渋谷さん!」 満面の笑みが資料の横から出て来た。 「元気そうじゃん」 「はい!渋谷さんがいなくなって寂しいです!」 「…いいから、とっととその資料しまって来い。」 「い、急ぎます!」 真面目な分わかりやすいよね、樹は。 ねっきーの背中を見送りながら「いいの?一緒に行かなくて」と含み笑いした俺に、バツが悪そうに「何だよ…」と少し頭をかいた。 「お前に話があるんだよ。社内コンペの事。」 社内コンペ…か。正直、真理さんの事で頭がいっぱいだったしちゃんと考えていなかったかも。 「まあ、樹と組みたいのは山々だけど、今年は移動したばっかだしね…。」 「俺はそこを期待してんだけど。木元さんと組んでみたいよ、やっぱ。 一緒に仕事してんだから頼みやすくはなったでしょ?」
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