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あれから、先生と<どう>ということも無く季節は進み、街全体が淡いピンク色に包まれる頃、私は高校二年生になった。
「はーるこ!おはよ!」
数週間ぶりに通学路を歩いていると
後ろからかかる久々の声に、嬉しくて勢いよく振り返ってしまう。
「夏稀さん!お久しぶりです、おはようございます!」
「やだ~春子は久々に見ても可愛いわ~!」
そう言いながらニッコニコで夏稀さんは横に並ぶ。
春休みは夏稀さんが多忙だった為会えず、会って話したのも久しかった。
「しっかし、久々に春子に会えたと思ったら、もう2年だなんて早いわよね」
まだもう少し一年生のままでちやほやされてたかったわ、と続いてボヤきながら唇を尖らせた。
「あ、でも今日はクラス替えじゃないですか?」
始業式の日は1年を共にしたクラスメイトとはサヨナラをし、新しいクラスメイトと出会う日でもある。
そしてうちの学校ではこの日がある意味運命の日でもある。
この学校のクラス替えは少し特殊で、1年の時に文理に別れたコース選択をし、2年の時に決まったクラスがそのまま3年まで持ち上がるといったシステムなのだ。
「あ、そっか、そだよね」と夏稀さんが同意を表す言葉を発したと同時にピタッとその場に止まってしまった。
「?夏稀さん、どうかしましたか?」
「春子」
「えっ、何かまずいこと言っちゃいましたか!?」
「違うわ、クラス替えって言ったわよね」
いつもよりも低い声での夏稀さんとの問答は怖い。とりあえず首だけ縦に振って肯定する。
突然満面の笑みで顔を上げた夏稀さんは「ちょっとアンタここで待ってて!!」と叫ぶと、困惑する私を取り残して学校の方へ走っていってしまった。
「あ~!!最高、毎日近くで春子の顔が拝めるだなんて…。」
夏稀さんが走って学校に行ってしまってから数分後、やっと学校に到着した私はクラス分けの表を見るまでも無く、正面から飛び込んできた夏稀さんの喜びっぷりと、言葉の断片から夏稀さんと同じクラスだと知らされた。一緒に新しいクラスに入り、窓際の後ろの席に着くと、真ん中の方の席からこちらにやって来て夏稀さんは、恍惚とした顔でそう言いながら私の手をギュッと握ってきた。
「もう、大袈裟ですよ夏稀さん。」
そこまで嬉しそうに話しかけられると、流石にどう反応して良いものか分からなくなる。
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