第1章

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「はい、何でも交通事故に遭った日に各々男は奥さんに、女はご主人に会う予定だったとか、夫妻はお互い別れ話を切り出すつもりだったそうです。それから、各々恋人の元へ行く手筈だったとか、それでいついまでも途方に暮れていたところ新聞に御夫妻の記事をみて慌てて来たそうです。」 確かに名前は伏せてあるがまれな記憶喪失のケースとして昨日の朝刊に記事が載っていた。 「バカな、夫妻がたまたま同じ日に別れ話をするつもりだったとでも?でいま来ている2人の風体はわかるかな。」 「ええ、言いますとも。男性はベージュのコートを着た40代ぐらい、女性は赤いスカーフをした...。」 博士は言葉を失った。 「それで、いかがしますか?」 受付嬢はいつまでも博士の指示を待っていた。
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