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早速、私は荷物を入れるため案内をする。
「ここがまりちゃんのところです」
私がそう言うと、お母さんも続く。
「ここだよ、まりちゃんのかばん入れる所」
着替えるところを案内すると、またお母さんも説明し直す。
「まりちゃんのお着替えはここね。わかった?」
まりがコクンと頷いた。
なんて丁寧で細かな説明をするんだろう。もしかして、繰り返して教えるのは嫌味なんだろうか?私は信用されていないのか?
いや。そんな人には見えない。まりが心配と言っていたし、過保護なだけだとも取れる。
どちらにせよ、私はもっと精進せねば。
とはいえどんな顔をして謙遜するのか気になった。
「とても丁寧に説明してくださって、ありがとうございます」
私がそう言うと、お母さんは一瞬ハッとし暗い顔になった。何かまずかったか?
「藤岡先生、実は私、病気でして…もう長くないんです」
言葉に詰まった。いかにもそんなような顔をしてはいるが、まさかそんな。
「う、動かれて大丈夫なんですか?」
「…でも、まりが1人で何でもできるようにしておきたくて…。まりをよろしくお願いします」
お母さんはまっすぐこちらを見て言った。
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