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箒で地面を掃きながら落ち葉を集めるも、作業に身が入らない。
最近の自分はどこか変だ、とトオルは思った。
「はぁー…なんか、モヤモヤする」
スッキリしない気分を払いのけるため両手で頬を叩いて気合を入れる。
気合を充填すれば律の方へ向かう。
「なぁ、律どのくらい集まった?」
「わー、ありがとうございました!」
すると見知らぬ相手と律は話していた。
誰だろうと思えば、話し掛ける為に歩み始めた足が止まる。
その子はまるでトオルのような背格好で薄黄色の髪の少年だった。
「いえいえ、どう致しまして。また困ったことあったらいつでも聞いてね?」
そう言って律はいつも浮かべている優しげな笑みをその子にも向ける。
ざわっ…
その笑顔を見た途端に心がざわつく。
「…っ!」
呼吸が早くなり、胸が締め付けられる。
「あ、トオルさっき何か言った?…トオル?」
「え?ああ、さっきの知り合い?」
気づかぬ内にぼーっとして居たらしいトオルは律の声に反応が遅れてしまう。それを誤魔化すようにはにかんで見せる。
「いいや、一年生で迷子になってたから道を教えてあげてたんだ。なんだかトオルみたいで放っておけなくて」
「ふーん、律って誰にでも優しいよねぇ」
「そうかな?まぁオレ可愛いものとか好きだし、なんて冗談だけど…トオル?」
自分でも馬鹿なことを言っている自覚はあるのに溢れだした言葉が止まらない。だけど、トオルみたいだと笑った律の顔が頭から離れないでいた。
「ちっちゃかったら誰でもいいの?律は俺がちっちゃいから優しくしてくれるの?俺にみたいな奴だったら誰でもいいの?なんで誰にでも優しいの?」
そんな事はないと否定する自分とただの庇護欲の延長なのだと卑下する自分がいる。律はそんな奴じゃないのに…。
「ト、トオル!?何言ってんの?そんなことないよ!友達だからに決まってんだろ?」
律はいつだって優しい。
けど、その優しさが今はとてもつらい。
「どうしたんだよトオル?オレ何かしたか?」
「……。」
…最低だ。
友達傷付けて、何がしたいんだろう?
これはただの八つ当たりだ。
「トオル?」
「…ごめん、今は1人にして」
今は1人で考えたい。
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