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『黒という存在』
どんな人格だってそれも含めて律なんだ。
***
一階の廊下を歩いて居れば見知った相手を中庭で見つける。遠目から見ても誰だか分かる。律だ。何をしているのか暫く観察すれば、どうやら木陰で寝ているらしい。
「ふふ、ちょっとからかいに行こうっと。」
クスッと小さな笑みを浮かべれば近場の窓を開け、近くに人が居ないのを確認すると軽業師の如く窓から外へと舞い降りる。
起こさないよう静かに近寄れば正面にしゃがみ込み覗く。
相変わらずまつ毛が長いなぁ…と感想を漏らせば、そっと手を伸ばす。
つんつん。
人差し指で頬っぺたを突ついてみるが無反応。
ぺちぺち。
手のひらで軽く頬っぺたを叩いてみるが無反応。
んー。起きない。
次に何したものかと考えながらさらに覗き込むと両目が薄っすら開く。
「…トオル?」
「あ、起きちゃっ…」
た。
と言う前には天地が逆転していた。
「あれ?律?」
背中には地面。目の前には律。
これはどういう状況なのだろう。
「やっとお前と話せるぜ」
は?り、律さん?今なんて?
「″俺″に悪戯しようとしてたのか?悪い子だなぁ」
「え?律…だよね?」
「″オレ″は″俺″だぜ?それより悪い子にはお仕置きが必要だよな?」
そう言われ、さわっとお腹の辺りに違和感を感じる。
「ひぁっ!」
手だ。
律の外の寒さで冷たくなってしまった手がトオルのお腹に触れ、体温を奪っていく。
「はは、可愛い鳴き声だな?…もっと聞きてぇな…ほら、抵抗しないとまだまだ冷たい思いするぜ?」
そう言って律は制服をたくし上げる。トオルは普段ならばこんなふざけ方は絶対にしないと思っていた相手からの出来事に混乱し身動きが取れず固まる。
「…ほんとに抵抗しないのか?」
抵抗しないトオルに少し不安になったのか律は手を止める。
「あ、り、律…な、んで?」
律に問われ、ようやく声を絞り出すように喋る。その声は震えており、トオルの表情は今にも泣きそうだった。
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