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「俺のこと…怖いか?」
そう目の前の相手が問う。
怖い、というよりただただ驚きと戸惑いしかない。
そう聞いてきた律の表情も切なげだった。いつも笑顔の絶えない相手のそんな表情を見てしまった今、恐怖という感情はない。
いつの間にか俺の驚きや戸惑いは消えてなくなっていた。
「…怖い?誰にモノを言ってんだ、律?」
急に強気になったトオルを見て律は呆気に取られたような表情をしている。その表情があまりにも滑稽なのでトオルは口元が緩むのを感じる。
「エロは俺様の専売特許だぞ?そのくらいじゃビビらねぇっての!」
呆気に取られた顔が一気に破顔する。
切なげだった表情は面影もなく、今は最初に見た悪戯な笑みを浮かべている。
「ふーん?じゃあ、こんな事してもイイってことだよな?」
「ちょっ!ばか!どこ触ってんだよ!」
これ以上の愚行を許すまじと相手を押し退け起き上がる。
座高でも幾分小さい己の身体が煩わしく、立ち上がると相手を指差す。
「律!お前、後で覚えとけよ!この仕返しは必ずしてやる!」
小物の如く、捨て台詞を吐き出せば元来た場所から校内へと逃げ帰った。
ここから俺と律と黒くんの物語が動き始めたんだなって今になって思うんだ。
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