黄瀬斗織という人物についての考察

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『手を繋ぐことすら怖い』 キミに触れることが許されないことのような気がしたんだ。 *** 春の温かい陽射しが眩しい今日。 我が男子校では只今、花見の真っ最中だ。満開の桜がそよ風に揺れ、ひらひらと桜の花弁が舞い散る。 不意に陽射しが陰る。 振り返り、頭上を見上げれば見慣れた顔がそこにある。 「どうしたの?みんなの所に行かないの?」 その屈託のない笑顔に自然と顔が緩むのが分かる。 ああ、この笑顔好きだなぁと相手の顔をぼんやり眺めながら思う。 「トオル?」 「あぁ…ちょっと休憩。騒ぐの疲れちゃった」 そっか、と言って俺の隣に腰を下ろすと沈黙する。 そのまま暫く何も喋らない。 けど、気まずくなるワケでも話題がないワケでもない。 「…」 「…」 チラッと相手の方を見れば、向こうもこちらを見ており思わず2人して吹き出してしまう。 「ふふ、何かしおらしいトオルって変だね?」 「なんだと、失敬な!俺はいつだって大人しいじゃん」 関を切ったかのように喋り始める。 何も考えなくても言葉が出る。 自然と表情が綻ぶ。 でも、なにかが違うようなそんな気がした。 律といるのは本当に楽しくて時間はあっという間なのだと感じる。 「おーい、お前らもこっち来てゲームしよーぜ?」 遠くでクラスメイトが呼ぶ声が聞こえる。 「うん、分かった!…ほら、行こトオル?」 そう言って律はトオルに手を差し出す。 「…うん、行こう」 自分は今の現状に満足している、今の関係が心地よいのだと言い聞かす。 そして、すぐ側にある律の手を繋ぐことすら怖いだなんて気持ちは気が付かないフリして笑顔を作る。 それぐらい分かってる。 この時から俺は律が好きだったんだ。 →
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