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結局、おじいちゃんは戦争から帰ってくることはなかった。
それは、元気だった頃のおばあちゃんから直接聞いたのだけれど、今のおばあちゃんは、おじいちゃんが帰ってくるのを信じて待っている。
それが不幸なのか、もしかしたら幸せなのか、私には分からない。
だけど、もし、この先おばあちゃんが不幸にも死んでしまったとして、天国で再会したおじいちゃんには、おばあちゃんに、こう言って欲しいなと思う。
無口だったおじいちゃんだけれど、おばあちゃんに、こう言って欲しいなと思う。
離れ離れになってしまったあの日の姿の二人。
数十年ぶりに再会した二人。
微笑むおじいちゃん、微笑むおばあちゃん。
おじいちゃんがおばあちゃんの頭にそっと手を置く。
おばあちゃんは照れくさそうに笑う。
おじいちゃんはもっと照れくさそうにしている。
だけど、おじいちゃんは、はっきりとした声で言う。
「俺も、お前の事を、ずっと待っていたよ」
そう言ってくれたらいいなと、私は、おばあちゃんの横顔を見詰めながら、思ったのだった。
〈了〉
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