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少し狭いその道は、自転車がギリギリすれ違う事のできる幅で、無機質なコンクリートの壁が威圧するように両側にそびえ立ち、そこから見える空は遠いと感じる。が、歩いていくとだんだんと様子は変わって、壁はいつの間にか灰色のレンガ造りに変わり、そして、開けた小さな広場が目の前に姿を現わした。
周りの時間に取り残されたような雰囲気が漂うその広場には、空の青色が映りこみ、静けさと、商店街の方から聞こえてくる賑わいだけがBGMのように流れる。地面に敷かれた石畳は、長い年月をかけて削れていき、すっかり角が取れて滑らかになっている。
壁のそばに置かれた小洒落た観葉植物。その横にポツンと白いベンチがその陰に隠れて居座る。
僕はそれを横目に流して、広場の向かいにあるあの店に向かった。
店の入り口には『Sir.Adam Knight』と書かれた看板が置いてあり、店の窓からはティーカップやポットが飾ってあるのが見える。
チリン
木製のドアをギイっと開けるとベルが鳴った。
店のなかは落ち着いた感じの暖かい明かりが点き、所々に木の梁や柱が見える白い壁には、紅茶を運ぶために使う麻袋が飾ってある。
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