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「かしこまりました」  チリン ベルがなった。またお客さんが来たようだ。僕は入り口に向く。 「あ、いらっしゃいませ。ああ、麗子さんですか。奥へどうぞ」  ドアのベルを鳴らして入ってきた人を、僕は瞬時に誰か理解した。  一宮 麗子さん。この人もまたこの店の常連客で、毎日のように来ている。まあ、常連とは言っても義弘さんの従姉で、この店の一番のスポンサーなので、来るのは当然のようなものだが、僕にとっては少し厄介な所がある。 「正太くん。今日もいつものお願いね」 「かしこまりました。すぐに用意しますね」 彼女はそれを聞くとニコッと笑って席に着いた。  ワンピースの上からカーディガンを羽織っているいつもの服装で、相変わらずスタイルが良くて綺麗な顔立ちをしている。後で纏められた長い黒髪は、淡い水色のシュシュでポニーテールにまとめられている。  今西さんはカップを置き、麗子さんの方を向いた。 「麗子ちゃん今日も綺麗やね」 「今西さんありがとう。あなたもそのスーツきまってるわよ」 彼女は落ち着いたトーンで言ったが、皮肉っているのは目に見えなくとも分かる。 「そうか?おおきに」 しかし、まあいつもの事なので、今西さんは笑いを含んでそう言った。  僕はそれを横目にカウンターに向かった。 「義弘さん。一宮さんが来ました」 「そうか。ならちょうど良い。出来たばかりなんだ」
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