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ドクドクー、と波打つ心臓の音が龍馬に聞こえてしまうんじゃないかと心配になるくらいに胸の音がなる。俺…何にどきどきしてるんだよ。こいつが変な事言い出すから、そのせいだよ。
「お前ふざけんなよ。あんま。」
目の前でにやにや笑う男に怒鳴りつけて掲示板の前から走り去る。
ガヤガヤと騒がしい教室の中に入っても、どくどくの波打つ心臓に、走ったせいだと言い訳をする。
なんだよさっきの。
俺になんか恨みでもあんのかよ。
イスに腰掛け、そんな風に脳内を支配するさっきの出来事を払拭するように、頭をくしゃくしゃにして机につっ伏せる。
「キリタニどうしたの?ご飯一緒食べよう」
顔を上げれば水島が弁当箱片手に俺の顔を除きこんでいた。いつもなら可愛い仕草に微笑ましくなるところだけど、今はそんな余裕もなくただ、何も言わず水島の頬に手を伸ばす。俺が手を伸ばすとびくっと驚いたように水島は身をすくめる。
「んな可愛い顔すんなよ。」
そう言ってやると、水島は照れたように言葉をなくしている。俺はいつも通り。何も変わらない。
そう自分に言い聞かせる。
「…口ばっかり。からかわないでよ」
照れたように笑う水島。
「からかってるつもりねぇよ。本音だよ。」
いつものように流れていく日常。
ふと目線を教室に移せば、龍馬がクラスの奴らと飯を広げていた。
「サエキたちと食べよ?行こキリタニ。」
水島はいつもの日課を悪気なく俺に促すけど、
今の俺は、昨日までの自分が恨めしく思う。ただここで断れば不自然に思われるかもしれないと、自分の中で葛藤する。
「水島わりぃ。先行ってて。俺お茶買ってくるわ。」
我ながら自然な言い訳だ。
「そう?わかった。後でね」
水島は疑う事なく、龍馬たちのところへ向かう。
俺は龍馬を見ないようにして足早に教室を後にする。
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