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「ってぇな」
龍馬はペっと地面に唾を吐き出した。
ひるんだ隙に龍馬を突き飛ばし身なりを正す。
「お前殺されてぇの?」
地面にケツをつけて座っている龍馬の腹めがけて思いっきり蹴りを入れる。
一瞬苦しそうな顔をしたけど、
にやっと笑い立ち上がる龍馬。
俺の髪を掴みフェンスに体を叩きつける。
「お前も一回泣かされてぇか?」
地を這うようなドスのきいた声。
足の間の急所スレスレのところに龍馬の膝が入り、
がんっとフェンスが音を鳴らす。
咄嗟に硬く目を瞑る。
今まで見たことないような龍馬の姿に言葉を失う。
はっきりと本能的に悟る。
俺は、こいつには勝てねぇ。
この行動を払拭するように、龍馬はにっこり笑い
「怖かったよなミナト。ごめんな。」
俺の頭をくしゃくしゃにする。振り払って殴ってやりたかったけど、龍馬の笑顔にこの状況から解放されるんじゃないかと、縋るような目で龍馬を見てしまう。
「俺がふざけてねぇってわかった?」
龍馬はにっこりと俺に問いかける。
ここで答えを間違えれば俺はさっきよりもひどい目に合う。言葉を選びながら告げる。
「俺は…女しか抱けねぇよ。悪りぃけどお前の事そういう目では見れねぇ。今日の事も忘れるから、今まで通りやってこうや」
俺なりの最大の譲歩。
「俺、オンナにフラれたのはじめて」
龍馬が馬鹿にしたように作った顔で悲しそうに笑う。さっきの俺を馬鹿にするように。
「オンナでもなんでも好きに馬鹿にすりゃいいけど、俺普通になんか傷ついたわ。お前そういう目で俺の事見てたんだな。」
龍馬は俺の目を見ながらはっきり告げる。
「気色わりぃって?俺さ、お前見てるとイライラすんだよ。なんか。」
龍馬の口から告げられた言葉に胸が鳴る。
俺はこいつの事嫌いじゃなかったし、同じ男から見てもかっこよくて、いつでもそつのないこいつが俺よりもいい男にみえて、尊敬じゃねぇけど、一目置いてとのは確かで、そんな奴からのこんな言葉に少しだけ悲しくなる。
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