6人が本棚に入れています
本棚に追加
「ね?聞いてる?桐谷ってば。」
俺を見上げながら頬を赤らめて小さく怒る。
俺より20センチは小さいオンナ。
守ってやりたくなるような小さな体、細い手足、白魚のような肌、黒目がちの大きな瞳。ダメージを知らない綺麗な黒髪。
男ウケを絵に描いたようなこの小さなオンナに、実は俺は性的に魅力を感じない。綺麗なオンナだなとは思うけど何も感じねぇ。俺は男の出来損ないかもしれない。
「ごめん。ぼおっとしてた。何?」
そんな考えを払拭するように、自分自身を律するようにわざと、オンナの髪をくしゃっと撫でながら腰を折って覗き込むように謝ると、オンナは照れたように目線を下げ、頬を膨らませわかり易く怒る
「だからね、センセーが呼んでるってば。職員室。最近ガッコーきてないからでしょ。やばいんじゃないの?」
なんだそんなことかよ。と内心思ったけど態度には出さず、心配そうな顔をする女の頭をもう、一度撫でて礼を言う。俺の一挙一動に可愛い反応を示すオンナを心底可愛いと思えない俺は病気かもしれない。
じゃあね。と長い髪を振り乱してオンナは小走りで屋上から出ていく。
そんなオンナの後ろ姿を眺めながらため息が出る。
教師に呼ばれたから憂鬱なわけじゃない。さっきのオンナは丁寧に俺を呼びにきてくれたけど、いちいち素直に教師の言う事を聞く気にもなれず、屋上に張り巡らされているフェンスを背もたれにして、動くつもりもないから座り込む。
なぁ、俺がもし、お前の事好きって言ったら、お前は俺のそばにいてくれる?
俺がもしお前にこんな聞こえない問いかけをしている事を知ればお前は軽蔑するに決まっているよな。
聞くまでもなく、答えが目に見えているのに、
自らしてしまう馬鹿な問いかけにもう一つため息をつく。
どうして俺がこんな事に悩まなきゃきゃいけねぇんだよ。
最初のコメントを投稿しよう!