第1章

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国立八条宮学園、博物館入り口のエントランス。 ざわざわとした空気が広がる。 新学期二日目の今日は、高等部新入生のオリエンテーションの日だった。 おかげで生徒会の執行部と役員は昨夜の疲れが取れないまま働いている。 「あ、あの…っ。これから博物館の案内をします。一年生の皆さんはついて来てください」 一年生の生徒全員を前にして花良が言う。 五百人分の視線を受けた花良は小さく震え上がった。 花良の声を受けて、一年生は水を打ったようにしんと静まりかえる。 気まずい空気に困ったような視線で花良が見つめてきた。 俺は助け船を出すために、花良の隣に立つと大きく声を上げる。 「博物館の案内を担当します。生徒会会長、三年の日宮(ひのみや)英司(えいじ)。それと、同じく三年の春宮(はるみや)花良(かお)です。一年生の皆さん、よろしく」 俺達の名前を聞いて、今度はひそひそとしたざわめきが広がった。 「日宮に春宮って言ったら、宮家でも一番権力のある家だろ…」 「しかも、見てみろよ。ネクタイの色」 「さすがだなぁ…。俺達とは違うよな」 こそこそと言われるのは、あまりいい気分じゃない。 そんな噂話にも似た声を背に聞きながら、俺達はエントランスを後にした。
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